愛しのポークビッツくん

 

そのとき、私はセフレのポークビッツくんに哀れにもガチ恋していた。

 

ポークビッツくんのポークビッツポークビッツだと知ったのは、初めて体の関係を持ってから少し経ってからのことだ。

 

ポークビッツくんは出会い系アプリで知り合った同い年の男の子で、お互いが幹事となって友人を連れ、最初は2:2の飲み会をした。

ポークビッツくんはパッと見、女性経験があまりなさそうな、大人しそうな顔立ちをしていて、メンズビオレのCMに出てくるイラストみたいな顔をしている。

 

ポークビッツくんを好きになってしまってから気付いたのだけど、とろけるような笑い方をする、すごくすごく可愛いひとだった。

会わなくなってもう半年以上経つけれど、その笑顔を思い出すだけで、泣きそうになってしまう。

 

2:2の飲み会のあと、後日二人で食事に行くことになった。

前日同僚と飲み歩いたあと、午前3時頃に先輩の家に転がり込み、異様に居心地のいい先輩の家で日が暮れるまでダラダラしていたおかげで、待ち合わせ時間を1時間遅くしてもらうくらい、楽しみにしていた。

 

私の好きなピザのお店で食事をして、解散しようと思ったのだが、なぜかそこでポークビッツくんは「もう1軒どうですか?」と二次会の提案をした。

ここで二次会に行ったら終電を逃すこと請け合い。

「嫌じゃなかったら…」と詰められ、嫌ではなかったのでそこまで深く考えずに、次のお店に行くことに決めた。

もちろん断って帰宅することもできたが、しばらくまともな恋愛もせず、恋人もおらず、Tinderでセックスする相手ばかりを探しているような私が、こんな純朴そうな人に2軒目に誘われたことが、素直に嬉しくて、素直にときめいてしまったのだと思う。

 

しかし、2軒目に入って早々、私はもう飲酒量が限界に達してしまい、お酒を飲むこと自体楽しめなくなってしまった。

このお店も朝までやっていないし、外は寒い。かといってカラオケはしんどい。オタクは気心の知れたオタク以外と行くカラオケで歌う曲がないのだ。

というかこういうときって、終電を逃したあと1時間はあっという間に過ぎて楽しいが、そのあとは5分経つのが仕事中くらい遅くなり、喋ることもだるくなり、途端にすべてがつまらないものになってしまう。

楽しい楽しいオールの中にある無の時間が耐えられない。

 

私は結構早めに帰りたいモードになってしまい、そのままポークビッツくんをタクシーでお持ち帰りした。

正直そのとき、明確な下心があったわけではなかった。

当時は意識的に性欲を消費しようとしていたので、セックスについての倫理感はネジが緩んでいたことは認める。

しかし、言い訳がましいが、どうしてもセックスがしたくて彼を連れ込んだわけではない。

どうしても自分のベッドで休みたくなってしまったのだ。自分の家に帰ることができるなら、セックスしようとしまいとどちらでもよかった。

 

その証拠に、実際ポークビッツくんと性行為に至ったのは明け方のことである。

 

彼は明け方までずっと、私を抱くか抱くまいか迷っていたようだった。

結果として、なんかわからんけどポークビッツくんとのセックスは満足感が高いものだった。

 

それ以降、ポークビッツくんは毎週末私の家に来て、朝晩2回の性行為を楽しんだ。

 

そういうことを始めてからおよそ1ヶ月で、私はポークビッツくんのことを好きになってしまった。

ポークビッツくんは私の頬や額にキスすることがあったので、頑張って告白すれば、てっきり私と付き合ってくれると思っていた。

他のセフレとの連絡を完全に断ち、早めのバレンタインに告白したが、なんと保留にされた。

そしてそのまま半年間、保留のままセックスだけを繰り返した。

私は返事が欲しかったが、その実「付き合う」以外の返事を聞く勇気はなく、「一回ちゃんと断った方がいい?」などという優しさに似た偽物のオブラートに包まれたナイフでちょっと切りつけられる度に逃げていた。

 

ポークビッツくんが帰ったあと、しくしく泣くようになってから、LINEをわざと返さなかったりするようになってから、自分でも潮時だと感じるようになった。

デートの真似事をしてみても、恋人のような行為をしてみても、きっとダメなんだろうなと、毎日泣くほどわかっていたのに、「もう会わない」というその一言だけが遠かった。

 

 

昔付き合っていた彼氏には、それが言えなかったので、今回は言えてよかった。

悲しいけど、会わないと言えてよかった。

いまでも当時の気持ちを思い出すと簡単に泣けてしまう。でも、思い出さなければいいだけだ。

 

しんみりした自己語りになってしまったが、何よりも重要なのはポークビッツくんのポークビッツである。

勃起状態でない陰茎は、ホント、もう、なんていうか、クレヨンしんちゃんぞうさんそのまま。コロコロコミックのちんちんなのよ。

明け方の薄明かりの中でしんなりした彼のポークビッツを見たときの衝撃。

心からの驚愕でした。

こんなにも小さいもんが存在するのかと。

どちらかというとえづきやすいタイプなのですが、ポークビッツくんのはなんか上手に舐められるなと思って、自己肯定感が強くなっていたのですが、サイズ感に起因するものでした。

 

サイズって、そこまで大事な要素じゃないんだということに気付きました。大きくないから痛くないし、回数を重ねれば重ねるほど気持ちよくなっていった。

重要なのは体位と気持ちだったのかもしれない。正常位のときはマジ「無我の境地」ってくらいスン顔するしかなかったけど、寝バックはかなり満足度◎。

たぶん、気持ちいいかどうか、私の好意もかなり関係あったんだろうなと思う。

 

色んな要素が噛み合ったり噛み合わなかったりして、相性がわかる。

 

探せば簡単にセックスする相手は見つかるから、恋人が欲しいと躍起になる必要はないと思っていたけど、性行為によって精神的な満足感を得ることを目的とするならば、やはり最初に見つけるべきは愛すべき恋人なのかもしれない。