急にSnowManの岩本照を愛しちゃった

 

ある日から急に、SnowManの岩本照が好きになってしまった。

 

明確な理由はよくわからない。

気付いたら携帯の待ち受けは岩本照ばっかりになっていたし、インスタやTikTokアルゴリズムも岩本照に埋め尽くされてしまった。

ドラマなんていつも見ないのに、岩本照見たさに舐めるように観てる。

 

まず顔が良くないですか?手前味噌な感想ですけど笑ったときの、目元、笑ったときの目元………。あと横顔。この横顔、なんですか?この愛しさはなんなんですか?すべての造形を愛してしまう。後ろ姿さえ良い。たくましい。お母さん私を彼と同じ時代に産んでくれてありがとう。

声とか、耳から離れないし。めっっっちゃ良い。

良いしか言ってない。でも他にどう言ったら良いかわからない。適切な形容詞が見つからないくらい唯一無二の魅力がそこにある。

王道のアイドルって感じじゃないと思うたぶんね。それなのになんでこんなに惹かれてしまう??、?の??????なんかもう岩本照が動いているだけで泣きそうになってくる時ある。

メインで喋ってないときの岩本照、めっちゃ良いし。喋っててもめっちゃ良い。体付きも、というかその存在が…。蠱惑的……みたいな……綺麗な蠱惑的……。

私が、私自身が最低限幸せになった上でまだ金銭的な余裕があったら、あとは全て岩本照が幸福になるために使ってほしい。ここに赤十字を建てよう。

ダンスも、良い。私ダンス全然わかんないし盆踊りすらできないけど、ダンスしてる時の岩本照めっちゃ良い。手足が長い。

佐久間になりたいという錯覚にさえ陥るほどの感情。いや、壁になりたい?いや、岩本照の飼い猫とかになりたい。いや、空になりたい。神となって彼の一挙一動だけを見ていたい。

もし岩本照に膝枕してもらえるんだったらなんでもする。なんでもしますから…………

 

なんで急にこんなに好きになってしまったのかよくわからない。 

 

この感情はマジモンの恋に似ている。

ホストとか配信者とかに貢ぐ人がいる理由がよくわかる。今回の場合は岩本照がたまたま手の届かない超常の世界に座す芸能人様だったから、そうならなかったに過ぎない。

10年前の血気盛んなオタクだった頃から、私はリアコ寄りの人間だったのだと思う。

今岩本照に急に転がり落ちてヒィヒィ言っている状況は、小学生のときに日番谷冬獅郎ガチ恋していたときの気持ちに似ている。

 

私は古のジャニオタだった。

まだYouTubeが無断転載天国だった頃、初めてHey!Say!JUMPの円盤を買ったことがきっかけで、ジャニーズが好きになった。

ファンクラブは入ったことがない。ファンクラブに入ってないことが、自信を持ってジャニオタですと言えなかった理由でもある。

 

だから申し訳ない。

こんな激情を抱いてしまったことが申し訳ない。

私より推してるファンがいる。その人が払ったお金で彼は飯を食っている。

それにタダ乗りさせてもらって推させてもらっているという、申し訳ない気持ちがあるのに、ティーンみたいな恋慕が体中を巡っていて泣きそう。

 

私のようなにわかのファンがこのような醜い劣情を抱いてしまい申し訳ございません。

早く落ち着きたくて…リアコから足洗いたくて…とりあえず書き出した…

……歌詞みたいになった……。

 

待ち受けを変えられるその日まで…

私はこの不気味な感情と同居して生きねばならない、

 

Tinderにいた怖い男

 

いま起こった怖い半分おもしろ半分の出来事をありのまま記す。

恐ろしい目にはあっていないものの、夜半に心がモニョる、出会い系特有の不愉快な気持ちを植え付けられた結末となった。

精神衛生上の観点から見ても出会い系アプリの使用には最新の注意が必要である。

 

マッチした彼は少し年下の男性で、Tinder内で話しているかんじ嫌な雰囲気ではなかった。載せてる写真からも、「もしかして好みの感じかも…?」と予感させられた。

プロフィールには趣味のことや、「タイプの人には返信が早い」とか「ぽっちゃりさんはごめんなさい」などと書いてあった。

 

私自身はプロフィールには記載していなかったものの、端的に言えばセックスする相手を探していた。

2、3年前、同じような目的で同アプリを利用し、結構うまいこと相手が見つかったりしていたので、血眼になって探していたわけではないが、雰囲気の合う、かつ、顔もある程度好みの相手がいればなーとぼんやり思っていた。

その時会った人たちは特段悪い人でもなく、会ってから不愉快な思いをすることもなかった。

中には数ヶ月にわたって会い続けた人もいて、自分史上最も倫理観が壊れていた時期とも言えるものの、実際に会うまで、自分の感覚に従って相手を慎重に選んだことが功を奏した(と自分では思っている)。

 

彼とTinderでしばらく会話をしたあと、私は体の関係をもつ相手を探していることを匂わせると、向こうも了承し、カカオトークに移って顔写真を見せ合うこととなった。

「こういう人ってライン嫌がりますよね笑」みたいなことを言われる。

結果的にカカオで大正解だったわけだが。

 

カカオに移って写真を交換した。

特にビビッとくるかんじでもなく、だからといって断るかんじでもないふうの人だった。

何が悪いでもなく、すぐセックスをするという決断がつかない相手というのがある。誰でもいいという人でなければそういう好みは少なからずあるのではないかと思う。

いくらなんでも自分より確実に力も強く、武器がなければ絶対に倒せない相手と個室で二人きりになって挙句に素っ裸になるというのだから、慎重にもなると思う。しかもキスしたりすんだぜ。

 

経験人数が何人かと聞かれて(今考えるとこの質問もキモイ)、Tinderで出会ってセックスしたのは10人にも満たないので、適当に「そんな多くないですよ」というと、「それはやりがいがある」みたいなことを先方はおっしゃった。(今思えば何がやねん)

ホテルに行くのにフリータイムがいいか休憩がいいかと聞かれたのだが(今思えばこの質問も嫌だな)、なんとなく踏ん切りがつかなかったので、「とりあえず飲みにでも」という提案をしたところ、微妙な反応をされた。

 

先方は私をめちゃくちゃにやりたいだけの女だと思っていたのか、そこそこ微妙な反応だったので、難しいならやめようかと言ったところ「いいよ、いこ?まあたしかに最初怖いもんね」的なことを言われる(今思えばこの言い方はちょっと嫌な感じ)。さらに「強気な人ですね」的なことも併せて言われた。

私は嫌な思いをさせてしまったのかな?と思い、その旨を謝った。絵文字をつけようとしたけど、やっぱりやめてちゃんと謝った。

そのあと1時間くらい通知に気付かなかったのだが、気付いたら通知が来ていて「不愉快な思いさせてごめんなさい」とか「嫌なことがあって神経が苛立ってて」とか10通くらいトークが来ていた。

 

さっき知り合ったばっかりの人からこれだけ連絡が来ると正直ビビるし、メンヘラ?地雷?卑屈すぎない?と思わずにはいられなかった。 

思えば、この人写真交換したときも「ブスだから」とかネガティブなこといってて(今思えばもしかして「そんなことないですよ」待ちだったのか?顔については決断できない状態だったのでコメントできてなかった)、「人の外見にとやかく言える顔じゃないから自信ない」みたいなことも言ってた。

いや、おまえプロフィールにデブお断りって書いてあったやろ。

てかもうここまでくると普通に怖くて全然会いたくない。写真交換は痛かったが、ここで気付けたのは幸いだった。

 

他人と揉めたくないときは、穏便に済ませるのが一番なので、「気にしないでください。今回は縁がなかったですね(泣)」と送った。

私はこういうのは縁だと思っていて、ちょっとでも合わないと思うとすぐその人との関係を進める気がなくなってしまう。

会う人は何も揉めることなくすんなり会うところまで行くが、一度不破が発生するともうそのあと上手くいくことはない。持論だけどこれに従っていれば自分が気持ち悪くならずにいられる。

 

でもこのあとが怖かった。

 

「もうやる気ないじゃん😅そんなんだから経験人数少ないんだよ」

 

いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

まって

 

ここでやりもくティンダーマンたちの名誉のために言っておくが、出会い系のやりもくがみんな、こんなメンヘラ煽り手のひら返し男というわけではない。

ほとんどのひとが、最終的にこちらが断ることになったとしても、それを無視することなく普通に返事をしてくれる。「雰囲気合わなさそうなので今回はごめんなさい」といえば「大丈夫ですよ!わかりました!」とお返事をくれる。

(もちろん「自分は常識人」と言いつつ既読無視の人もいる)

 

まじで。

このタイミングで急に手のひら返して煽ってくるの怖すぎない?

そもそも経験人数は多ければ良いというものではない……!とかいう心の叫びを飲み込んだが、色々ツッコミどころがすごい。

年下の男の人で、私がめちゃくちゃセックスしたいもんだと思い込んで経験人数に対してなんか急に煽ってくる感じとか、これまでの会話とかもすべてが重くて、知り合ったばっかりなのになんか哀れになっちゃって「私に断られたくらいでそんな卑屈になることないよ(要約)」みたいなことを言ったんですが、「長文(笑)(要約)さよなら✌️(捨て台詞)」みたいな通知が来たのでいい加減怖くてトーク消しました。

Tinderの方もマッチ解除しないと怖いなと思って見に行きましたが、ご丁寧に既に向こうから解除されていました。

 

「さよなら✌️」て。やば。

 

こういうことを年齢のせいにするのもよくないと思いつつ、やっぱりこのような浅慮の具現化みたいな態度ができてしまうのは若さゆえなのか?

出会い系で出会う女はやつあたりをしてもいいと?

相手の心理が不明すぎて「???」しかない。

 普通に不愉快なことをこうして残しておくのも微妙かなと思いつつ、出会い系にはさらに気をつけましょうという自戒も込めて、一からセフレを探すのは諦めようかなという境地。恋人作るよりむずいわ。

 

以上久々の出会い系の衝撃体験でした。

LINEはすぐに交換しないほうがいいし、連絡取るならカカオ偽名で登録したほうがいい。写真も送ったらすぐ消したほうがいいし、実際に会うまでにある程度やりとりをしたほうがいい。

少しでも違和感を感じたら気を使わずにすぐ切る。

もーーTinderやめよ

精神科に行って薬をもらった

生まれて初めて精神科に行った。

 

職場環境はそこまで悪くない。同僚間でのいざこざも無く、おおむねゆるい雰囲気で仕事生活を送っている。誰かにいじわるされたり、セクハラされたりしていない私だが、へらへらと外面は良いので元気で適当に物事を流しているように見られがちだ。

そしてそれはある程度真実だ。そんな自分の性格上、縁のない場所だと思っていた「精神科・心療内科」。人生23年目にして、ついに初上陸を果たした。

 

劣悪ではない職場環境の中、それでも精神科に行ったのは、ただひたすら仕事がつらかったのと、それによる気分の落ち込みが休日だけでは戻らなくなってしまい、数少ない有休をここ数ヶ月消費し続けたのが理由だ。

 

愚直だけど、もし何か名前が付くようなものなら、診断書を書いてもらって、1週間くらい休んで一人でどこか遠い島にでも行って仕事のことを忘れてゆっくり過ごしたいと思っていた。

 

仕事の日だけ朝から体がだるく、頭痛がする日々が続き、丑三つ時まで眠れなかったり、目覚ましが鳴る前に起きてしまったりということがあった。仕事に遅刻する夢も頻繁に見た。

仕事中は寝起きのような倦怠感を引きずったまま、一日中イライラしていた。目の前に来るお客さん全員の死を願い、立ち去った後に机を叩いたり壁を蹴ったり後ろ姿を睨みつけたりしていた。頭の中には罵詈雑言と差別的な暴言しかなかった。私が「いつか殺してやるリスト」を作らないのは、殺してやりたいほど嫌いな奴の名前を記録しておくのが嫌だからという理由だけだ。

同僚がお客さんや上司に怒鳴られているところを見たり聞いたりすると動悸がして、少しでも物の扱いが粗雑な人が来てペンやノートを音を立ててカウンターに置かれると、そのたびに心臓が凍るような気持ちになり、顔が引きつった。二度とそんな客が来ませんように、と心から願いながら、怯えながら、不安に囲まれながら出勤し、仕事をしていた。

貧乏ゆすりする後輩にも、態度の大きい先輩にも、肩で風を切って歩いている同期も大嫌いで見るたびに吐き気がした。全員消えろと思っていた。

 

そんなふうに、私の頭の中は負の感情で満たされていた。

こんな気持ちで働いているのは辛い。たとえ原因が自分だとしてもだ。私の態度が悪いのが気に障ったお客さんが、仕返しとして傲慢な態度を取っていたとしても、結果的に全てが大したことない思い込みなんだとしても。

できれば休日も平日も楽しい気持ちでいたい。誰の悪口も頭の中に思い浮かべたくないし、誰に対しても負の感情を抱きたくない。

 

「診断書だけもらって長い休暇でももらおうか」なんて邪な思いも確かにあったけど、これ以上自分を放っておいたら、いつか簡単に死を選びそうで怖かった。毎日ホームに来る電車のライトを見てぞわっとした気持ちになるのも恐ろしかった。

精神科に行くのはとてもハードルが高かったけど、邪な気持ちに背中を押され、Googleマップで比較的評価の良い病院を探して受診することにした。

みんなどういう症状で通っているのか全くわからなかったが、「診察中メモばっかりとってる」「受付のお姉さんの態度が最悪」など色々なコメントが付いていた。

 

私が病院に行くと、患者さんがちらほら椅子に座っていた。

みんな通っていて経過観察をしているだけだからなのか、診察はすぐ終わっている。海外ドラマと洋画の見過ぎで、真っ白なつなぎを着たジョーカーみたいな人が両腕を固定されて…という偏ったイメージを持っていた私は、患者さんのラインナップがあまりにも平凡な雰囲気で面食らった。みんなこんなに普通に見えるのに、内面にさまざまな苦しみを抱えているのだ。

 

さて、初診だった私は先生と話す前にお姉さんとお話しすることになった。忘れちゃったんだけど「ナントカ士」っていう肩書きのあるお姉さんで、どんな症状があるのか、どんな勤務形態で働いているのかなどを話した。

小さなことでもメモを取ってくれて、余すところなく聞いてくれようとしているように感じた。「診断書だけもらいにきたんだろこの腑抜け野郎。てめーのはただの怠惰だ」などという態度をとられることもなかった。

 

その後しばらく待たされたあと、先生とご対面した。若いお兄さんで、私の仕事の多忙さに共感しながら薬での治療を勧めた。

正直、時期的に見ても診断書もらって休むには微妙だったので、薬をもらってみることにした。

 

診察は2500円程度。薬は3種類、1000円程度。

1週間後にまた行くことになった。薬の効果を見たいそうだ。

貰ったのはイライラを抑える漢方、不安な時に飲む頓服薬、それから睡眠薬

 

正直、驚いた。イライラを抑える漢方なんて初めて聞いた。それに不安な時に飲むジェネリック医薬品、そしていつでも簡単に寝付ける睡眠薬

そんな薬があるなんて思いもしなかった。そして自分が服用することになろうとは。

便利な世の中になったもんだ、と素直に感心してしまった。そのうち幸せになれる薬が発売されるかもしれないなと思った。

 

私の症状などは、「あなたはただ気性が荒いだけですね」と追い返されるレベルの軽いものかと思っていたが、薬まで出て本当に驚いてしまった。私に長期休暇より薬を勧めた先生の言うとおり、診断書で休んでも根本的な解決にはならないのは確かだ。

漢方の効果を心から期待している。

愛しのポークビッツくん

 

そのとき、私はセフレのポークビッツくんに哀れにもガチ恋していた。

 

ポークビッツくんのポークビッツポークビッツだと知ったのは、初めて体の関係を持ってから少し経ってからのことだ。

 

ポークビッツくんは出会い系アプリで知り合った同い年の男の子で、お互いが幹事となって友人を連れ、最初は2:2の飲み会をした。

ポークビッツくんはパッと見、女性経験があまりなさそうな、大人しそうな顔立ちをしていて、メンズビオレのCMに出てくるイラストみたいな顔をしている。

 

ポークビッツくんを好きになってしまってから気付いたのだけど、とろけるような笑い方をする、すごくすごく可愛いひとだった。

会わなくなってもう半年以上経つけれど、その笑顔を思い出すだけで、泣きそうになってしまう。

 

2:2の飲み会のあと、後日二人で食事に行くことになった。

前日同僚と飲み歩いたあと、午前3時頃に先輩の家に転がり込み、異様に居心地のいい先輩の家で日が暮れるまでダラダラしていたおかげで、待ち合わせ時間を1時間遅くしてもらうくらい、楽しみにしていた。

 

私の好きなピザのお店で食事をして、解散しようと思ったのだが、なぜかそこでポークビッツくんは「もう1軒どうですか?」と二次会の提案をした。

ここで二次会に行ったら終電を逃すこと請け合い。

「嫌じゃなかったら…」と詰められ、嫌ではなかったのでそこまで深く考えずに、次のお店に行くことに決めた。

もちろん断って帰宅することもできたが、しばらくまともな恋愛もせず、恋人もおらず、Tinderでセックスする相手ばかりを探しているような私が、こんな純朴そうな人に2軒目に誘われたことが、素直に嬉しくて、素直にときめいてしまったのだと思う。

 

しかし、2軒目に入って早々、私はもう飲酒量が限界に達してしまい、お酒を飲むこと自体楽しめなくなってしまった。

このお店も朝までやっていないし、外は寒い。かといってカラオケはしんどい。オタクは気心の知れたオタク以外と行くカラオケで歌う曲がないのだ。

というかこういうときって、終電を逃したあと1時間はあっという間に過ぎて楽しいが、そのあとは5分経つのが仕事中くらい遅くなり、喋ることもだるくなり、途端にすべてがつまらないものになってしまう。

楽しい楽しいオールの中にある無の時間が耐えられない。

 

私は結構早めに帰りたいモードになってしまい、そのままポークビッツくんをタクシーでお持ち帰りした。

正直そのとき、明確な下心があったわけではなかった。

当時は意識的に性欲を消費しようとしていたので、セックスについての倫理感はネジが緩んでいたことは認める。

しかし、言い訳がましいが、どうしてもセックスがしたくて彼を連れ込んだわけではない。

どうしても自分のベッドで休みたくなってしまったのだ。自分の家に帰ることができるなら、セックスしようとしまいとどちらでもよかった。

 

その証拠に、実際ポークビッツくんと性行為に至ったのは明け方のことである。

 

彼は明け方までずっと、私を抱くか抱くまいか迷っていたようだった。

結果として、なんかわからんけどポークビッツくんとのセックスは満足感が高いものだった。

 

それ以降、ポークビッツくんは毎週末私の家に来て、朝晩2回の性行為を楽しんだ。

 

そういうことを始めてからおよそ1ヶ月で、私はポークビッツくんのことを好きになってしまった。

ポークビッツくんは私の頬や額にキスすることがあったので、頑張って告白すれば、てっきり私と付き合ってくれると思っていた。

他のセフレとの連絡を完全に断ち、早めのバレンタインに告白したが、なんと保留にされた。

そしてそのまま半年間、保留のままセックスだけを繰り返した。

私は返事が欲しかったが、その実「付き合う」以外の返事を聞く勇気はなく、「一回ちゃんと断った方がいい?」などという優しさに似た偽物のオブラートに包まれたナイフでちょっと切りつけられる度に逃げていた。

 

ポークビッツくんが帰ったあと、しくしく泣くようになってから、LINEをわざと返さなかったりするようになってから、自分でも潮時だと感じるようになった。

デートの真似事をしてみても、恋人のような行為をしてみても、きっとダメなんだろうなと、毎日泣くほどわかっていたのに、「もう会わない」というその一言だけが遠かった。

 

 

昔付き合っていた彼氏には、それが言えなかったので、今回は言えてよかった。

悲しいけど、会わないと言えてよかった。

いまでも当時の気持ちを思い出すと簡単に泣けてしまう。でも、思い出さなければいいだけだ。

 

しんみりした自己語りになってしまったが、何よりも重要なのはポークビッツくんのポークビッツである。

勃起状態でない陰茎は、ホント、もう、なんていうか、クレヨンしんちゃんぞうさんそのまま。コロコロコミックのちんちんなのよ。

明け方の薄明かりの中でしんなりした彼のポークビッツを見たときの衝撃。

心からの驚愕でした。

こんなにも小さいもんが存在するのかと。

どちらかというとえづきやすいタイプなのですが、ポークビッツくんのはなんか上手に舐められるなと思って、自己肯定感が強くなっていたのですが、サイズ感に起因するものでした。

 

サイズって、そこまで大事な要素じゃないんだということに気付きました。大きくないから痛くないし、回数を重ねれば重ねるほど気持ちよくなっていった。

重要なのは体位と気持ちだったのかもしれない。正常位のときはマジ「無我の境地」ってくらいスン顔するしかなかったけど、寝バックはかなり満足度◎。

たぶん、気持ちいいかどうか、私の好意もかなり関係あったんだろうなと思う。

 

色んな要素が噛み合ったり噛み合わなかったりして、相性がわかる。

 

探せば簡単にセックスする相手は見つかるから、恋人が欲しいと躍起になる必要はないと思っていたけど、性行為によって精神的な満足感を得ることを目的とするならば、やはり最初に見つけるべきは愛すべき恋人なのかもしれない。

 

上司にネイルを落とすように言われて人生への悲観が止まらない

上司にネイルを指摘された。

 

私の仕事は基本的に事務系でずっと室内にいるが、週1〜2回のペースで外回りもある。外出先は営業先というわけではないが、こちらからお願いして伺わせてもらっている。

 

上司は50代の男性で、異動してきて私の上司になった。

私の仕事場は大きく分けて2種類の職種で成り立っており、ひとつは私がいる事務方と、もう一方が警備系の仕事である。

上司の前の部署は警備系のところで、上下関係に厳しいイメージがあったので、わりと柔軟で部下にも怒鳴り散らさない上司が来て、私は結構驚いていた。

事務系と警備系の雰囲気の差にきっと思うところはいろいろあるのだと思うけれど(上司への態度や仕事ぶりなど)、上司はそれを感じさせない人だった。

とはいえ仕事に関しては鋭くツッコまれることもたびたびあった。私のような新しく入ってきた何も知らない部下にも、言い回しも易しく間違いを指摘した。怒られることはないものの、その的確さは警備系の雰囲気を感じていた。

 

私はどちらかというとその上司が好きだった。父娘ほどの年齢差があるにも関わらず、気兼ねなく話しかけられる雰囲気を持っている上司は大切だと思う。職務上も申し分ない人なので、私も頼っていた。

 

ネイルを指摘されたのは、外回りの仕事の話をしたときだった。

 

「外に行くなら、爪は外さないとな。」と言われて、私は一瞬唖然としてしまった。

続けて上司は、「ピアスも取らないとダメだし。爪も外すか手袋していかないとな(笑)」と言った。

 

上司に指摘された私の手のネイルは、今流行りのジェルネイルで、模様は至ってシンプル、白のフレンチにラメのラインが入っているものだった。

ネイルをしたきっかけは、元来爪が弱く、すぐ二枚爪になってしまうのを防ぎたかったから。そして、指先のおしゃれを楽しんでみたかったからだ。

初めてのジェルネイルだった。今まで、「一度やると永遠に続けなくちゃいけなくなる。」と思って手をつけていなかったネイル。そのネイルをすることは、私のおしゃれへの大きな決意であり、大きな一歩であり、うきうきすることでもあった。シンプルなデザインだったけど、いつもいつも自分の指を眺めていた。

 

ピアスについても、一度飲み会があったときに上司が私に「それは取れないの?」と聞いたことがある。

このピアスも、インナーコンクにぶっ刺さってるものであり、大変な腫れからくる痛みで卒倒しかけたり、ハナクソみたいな膿が完全に出てこなくなるまで2年くらいかかったりと紆余曲折ある穴である。そして、安易に外れないようにキツく締めてあるので、なんと自分では外すことができない。穴が安定するまで触らぬが吉なのである。

ちなみに右耳に4つ、左耳に3つピアス穴が空いている。

そのときは近くにいた女性の先輩が「そういう古い感じのこと結構気にされるタイプですか?」と言ったあと、別の話に流れていったんだけれど、きっと上司は以前から私の耳のピアスが気になっていたのだと思う。

 

「ピアスは髪下ろせば隠れるけど、ネイルは取らないとどうしようもないですね。」と私は苦し紛れに言った。上司は「そうだな」と笑った。

「いまどきそんなこと言う人間いるのかよ。」「相手方だっていまどきネイルしてるからってなんとかいう人間いないだろ。」「ジェルネイルはマニキュアと違って落とすのにもまたサロンに行って金払うんだぞ。」「客前に出る仕事している人はそういうことしちゃいけないって風潮自体が今の時代に合っていないし、それを求める相手が間違っている。」「じゃああなたの結婚指輪は良いのか。」「別の社員が外部から来た人間と接触するときのネイルは良くて、私はダメなのか。」「茶髪の社員は?」「爪が折れる。」「じゃあ手袋するわボケ。」「ピアスはダメで指輪はいいのか?あなたの結婚指輪は外す対象にならないのか?」「私以外のネイルしている人はどうなのか?」「このネイルは常識はずれだっていうのか?」などいろいろ言いたいことはあったけど、飲み込んでしまった。

 

そう言いたい気持ちはわかってしまうのだ。

古い規範の中で生きていた人は、指先の色も髪の色も耳の穴の数もきっと気になるだろう。

それは私のためではなく、自分のためだ。

私がどこか外でそういうことを指摘されないようにそう言っているのではなく、ただ自分が気になるから私にネイルとピアスを取らせるのだ。それを一般常識みたいに言うな。

 

上司は「外すか手袋」などと言ったものの、本当に手袋をすればオッケーというわけではないだろう。ネイルを指摘したときの空気を和らげるために手袋などという「冗談」を口にしただけであって、上司の中ではネイルを取るという一択しかないのだ。

 

優しい口調でネイルを取ることを強制されたモヤモヤと、初めてのジェルネイルから1週間しか経っていないことと、指摘された恥ずかしさと悔しさと、楽しいおしゃれを恥ずかしい気持ちにさせられたことで、私の胸のあたりはグジュグジュして、帰宅して初めて仕事のことで泣いた。

注意されたことが恥ずかしかったのか、悔しかったのか、憤りからなのか、考えてもわからないけど、ベッドの上で声をあげて泣いてしまった。

 

怒ることもできたのに、上司は限りなく優しく遠回しに指摘した。

まるで私が全て悪いみたい。

根拠のない、納得できる説明もない内容なのに、私はもうネイルを取るしかない。それが辛い。

 

 

なんだかネイルを指摘されてから人生への悲観が止まらない。

 

だって、熱望した仕事じゃない、いまも転職と勤務継続を天秤にかけて、どっちも同じくらい面倒くさいからなんとなくまだ惰性で進むことのできる方にいるだけの、なんの思い入れもない職場。仕事内容も、客も大嫌いな職場。残業代だって全額出ないような平気でブラックなところ。そんなところで惰性だけで働いている私は、好きでもない仕事のために頭の先から指先まで制限されるのか。耳の穴の数まで。

なんてこった。こんな人生なんてひどいんだろう。虚しくて死にそうだ。

 

本当に最悪な気分だ。

急いでネイルサロンのオフの予約を取らなくてはいけない。

さよなら、私の初めての指先のおしゃれ。

世の中外見が全てってブスがいうのどうなの?

 

アイちゃんがツイッターでつぶやいた。

 

「世の中、外見が全てだわ」

 

アイちゃんは私と同じ年齢の友人だ。

20代前半の働く女の子。


正直、めちゃくちゃ美人ではないと思う。

だからといって超絶怒涛のドブスでもないと思う。

毎日一緒にいた時期があったり、数え切れないほどランチに出かけて、頻繁に会わない時期があって…そんなこんなで丸3年になる付き合いだけど、彼女のことを美人だと思ったことはないし、「ぜってぇモテんだろうなァ〜オイ!」って思ったこともない。


でも彼女が好きだ。

美容にも気を遣っていて、自分で考えて良い化粧品も使っている。流行りにも敏感で、ネイルもいつも素敵なデザインだ。爪先にまで気を遣える女性はやっぱりすごいと私は心から思う。

それに彼女は指がすらっとしていてすごく綺麗で、ハンドモデルみたいだ。それに私が西村ヒロチョのネタをやったり、変顔をしたりしてボケるといつも笑ってくれる。

愛してるか愛してないかで言ったら

彼女のことはマジ愛してる🤟

でも顔がめっちゃ可愛いって思ったことはない。たぶん本人にそういう類のお世辞を言ったこともない。

 

 

そんなアイちゃんは自己評価が結構低い。
自分のことを「ブス」だとよく言う。自称ブスを当たり障りなくフォローする女子同士の礼儀としては

そんなことないよ💦カワイイよ☺️

と言えば済むのだが、彼女のことをマジ愛してるのでそんな薄っぺらい嘘はつきたくないという私のプライドがある。

だから私はいつも「いやいや…アハハ…」とフワッとした返答をするしかない。

なぜか私が謙遜する事態になりがち。


アイちゃんはアイちゃんで「ええ〜〜!?!?そんなことないよ😄全然ブスじゃないよ!カワイイよ!」というフォローを待っているわけではなく、ただ本当に二十数年を同じ顔で生きてきた感想として「私ブスだから」と言っているようだ。

なかなか重い。ぽっと出の友人がフォローできるような重みではない。それが私が上手にアイちゃんの顔を褒めてあげられなくても、彼女が私と一緒にいてくれる大きな理由だと思う。


もしアイちゃんがその自虐話にフォローを求めているのだとしたら、私は今までフォローのタイミングを死ぬほど逃しているので解雇されていたはずだ。

 

 

そんなアイちゃんが改めて、「世の中は顔だ」と言った。
これってどうなのかな?と私も改めて疑問がわいた。


すごく綺麗な人が、「世の中って顔が全てなんだな」と言ったとしたら、「やっぱ顔が良いから得することばっかりだな」というプラスの意味だったとしても、「顔だけ見て寄ってくるやつばっかりでもう誰も信用できない」ってマイナスの意味だったとしても、言いたいことはなんとなくわかる。


でも自分で自分のことをブスだと言う人は?
私はブスだ→世の中は顔だ→という文章から、俗世の地獄くらい残酷な三段論法が出来上がってしまう。

 

アイちゃんがブスかどうかはこの際どうでもいい。世の中外見が全てなのかどうかもどうでもいい。 


これもまた私の勝手な願望なのだが、アイちゃんみたいな子こそ、そんな後ろ向きなこと言わないでほしいのだ。
彼女の自己完結によって誰も救われない負のウロヴォロスが完成したのを目撃してしまった日にはもう、後ろ向きに底なし沼に沈んでいくような気分になる。

 

アイちゃんのような、自分のおしゃれに気を遣えるような子を、顔だけで判断しない人はたくさんいると思う。

前向きに後ろ向きな例えをするけど、超絶怒涛のドブスでも、指先や髪先にまで気を遣っているのは周りの人間はわかる。「あっあの子顔は可愛くないけど細かいところまで気を遣ってるな」って思う。これは良いギャップだ。指先がガビガビになってる美人より5000兆倍良いギャップだ。

 

だから、自分でそんなこと言わないでほしいのだ。世の中外見が全てだったとしても、その外見である自分の美しさに気を遣っているのだから、自信を持ってほしいのだ。

「世の中見た目」って言葉を、マイナスで使わないでほしい。それは美人に負けているって意味じゃなくて、アイちゃんが自信を持てるための言葉であってほしい。


私はブスだ→でも世の中顔じゃないよなってぜひ言ってほしい。それは他の人が言っても誰の心にも響かない言葉だから。美人が言っても「何実感ゼロのことぬかしとんじゃこの腑抜けが」って思われるだけだから。

それはきっとブスにだけ与えられた金言だから。

BUMP OF CHICKENのライブに初めて行ってきた

2017/09/17、初めてBUMP OF CHICKENのライブに行ってきた。というかライブというものに行くのがほとんど初めてだった。

行ったことがあるのは銀魂華祭りとニコニコ動画の歌い手がこぢんまりとやったライブハウスのライブだけ。

「初めてBUMP OF CHICKENの」というか「ライブというものに、ほとんど初めて行ってきた」という感じだ。

 

前日にツイッターのタイムラインで見かけたんだけど、幕張メッセで開催されたそのライブは、全国ツアーらしい。ツアー名は読めなかった。えいごわからない。

 

あるフットワークの軽さに定評のある3人のグループラインで、「同僚がBUMP OF CHICKENのチケット2枚余らせているのだけれど行かないか?」とお誘いがあった。
15日のことだ。結構急。


正直BUMP OF CHICKENのことはほとんど知らない。カラオケで歌い古された天体観測は、歌えるけど原曲をウォークマンに入れて聴いたことはない。ラフ・メイカーはよくカラオケに一緒に行っていた友人が歌ってたからそこそこ知っている。カルマはテイルズが好きだった友人が歌っていたからサビくらいは歌える。曲の認知度はそのくらいだった。


曲を知らないと楽しめないかもなと思ったが、「こういうライブって行きたくても行けないもんじゃないか?これは運が良いのでは?」と思い至って是非買わせてもらうことにした。もう1人のフットワークの軽さに定評のある子は予定が合わず、私はもう1人同行者を探すことにし、見つかれば行くことにした。


一緒にライブに行っても楽しそうな友人に片っ端から声をかけたものの、良い返事は一件も返ってこない。示し合わせたんですかっていうレベルで誰1人引っかからない。
翌日16日は仕事だったので、職場でも後輩や同期に声をかけてみた。
誰 1 人 引 っ か か ら な い 。
そういえば明日の17日の昼にやる飲み会もことごとく参加率が悪かったなあ…と思い至る。部署から出て行く人の解散会なのにである。人徳のなさがうかがえる。ちなみに私も部署から出て行く人である。人徳のなさがうかがえる。


人徳がないからBUMP OF CHICKENのライブにも行けん…と休憩室で困り果てていると、後輩の女の子がやってきた。私の半年あとに採用された彼女は、後輩だけど6歳くらい年上だった。真面目な人で、最近周りが頻繁に結婚するので焦って謎解き街コンに行ったらしい。
その謎解きちゃんに「明日BUMPのライブ行かない?」とダメ元で声をかけてみたところ、聞くなり「はい!行きます!」と…。


フットワーク軽!


おかけでBUMP OF CHICKENのライブに行けることになった。

私の職場は24時間営業なので、17日の朝に仕事が終わり、家に帰るとライブの準備をしたが、ライブに行ったことはなかったので正直何を用意したらいいかわからなかった。

なるべく身軽に荷物を整えたけど、本当は手ぶらで行くのがよかったみたいだ。

道すがらにツイッターで「とりあえず泣く」「最初から号泣する」「ひとまずやばい」みたいなアツい感想ツイートをちらちらと拝見し、正直「楽しめるかな」と思った。曲も知らないしバンドが何人なのかも知らない。顔も知らない。前髪が長いことしか知らない。メジャーな曲しか聴いたことない。あとライブでノるのが苦手。音楽に合わせて体を動かすのが苦手な自分が、楽しめるだろうかと。

 

結論から言うと、楽しめた。
ここからライブで思ったことを書きたいと思う。ちょっと失礼なことも言っているかもしれないけど、素直な感想だ。


オープンは16:00、スタートは18:00。
チケットに番号があり、16:30くらいに会場に入ることができた。場所はCブロック。その後ろに一番後ろのDブロックがあったと思う。
私たちが入った時、Cブロックの1/3くらいが人で埋まっていた。ほとんどの人が立って待っていたが、待機時間の1時間半はとても耐えられずに地べたに座った。もしかしたら白い目で見られていたかもしれない。
後ろに来た古参ぽい3人組の女性が「はぐれたらもう会えないかもねw」「前の方行けるかな?」などと話しており、JKぽい2人組が私のケツを蹴って前に入って来たので、私は「ああ、なんかやべえとこに来てしまったかもな」と思い、テンションが下がった。

よく知らないバンドのライブに来て、知らない曲が流れて周りは「ファアア〜〜っっ!もうやばぁい!泣くんだけど!」とか叫んでる中に佇んでいるのは辛すぎるなと思った。光るリストバンドをつけても全く気持ちが付いて来ず、謎解きちゃんと後ろの女性3人が、メンバー登場と同時に雄牛のように突進してきた場合、どういう姿勢で踏ん張るかということについて話し合っていた。


スタッフさんが高いところに上り、拍手、降りて、拍手、みたいなカルチャーを拝見し、その後は暗闇からチューニングみたいな音がたまに響き、開演時間が近付いてきた。
周りの人たちは「フェア〜〜!!」とか「やばい緊張してきたんだけど!」と話していたけど、私と謎解きちゃんは台風のことについて話していた。結構ヤバイと言われていた台風の影響で、幕張メッセにも少し雨が降っていた。

 

開演に先立って注意のアナウンスが流れたあと、バンドのメンバーが登場したみたいだった。首が痛くなる位置にモニターがあったんだけど、まだ映っていなかったので前の方にいるお客さんの「ヒェアアアア〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!キアアアアアアアア!!!!!!」という声で登場に気付いた。


メンバーは1人ずつ登場したみたいで、何度か歓声が上がっていた。私と謎解きちゃんのいた位置からはステージかどこにあるのかさえ把握することができなかったので、私たちは「そもそもバンプって何人だっけ」「1人以上ということしかわからないね」などと話していた。

 

一曲目は、幕張メッセに来るまでに予習として聴いていた曲の中にあったと思う。チケットを譲ってくれた相手にどの曲を予習すればよいか尋ねると何曲か教えてくれた。そのうちの一曲だ。
イントロが流れたときに左隣にいた男の人が爆音で何らかの単語を叫んだので、私は曲に集中し損ねてしまった。イントロがかかった瞬間に泣いてる女の子がいたので、どうやらめっちゃいい曲らしい。
後から調べたら「GO」という曲だった。今もこの曲を聴きながらこれを書いている。

 

驚いたのがそのあと歌ったのが「天体観測」だということだ。正直、歌わないと思っていた。理由は、有名すぎるから。
有名すぎる曲を、バンドは避けるんじゃないかなってなんとなく思っていた。しかもすごく古い曲じゃないだろうか。周りのBUMP OF CHICKENが大好きな人たちも、BUMP OF CHICKENを大して好きではない人がカラオケで適当に天体観測を歌うことを嫌い、私が知らない、聴いたこともないような曲を好きなんだと思っていたし、そういうのを楽しむ意味もあるのがライブというものだと思っていた。


ところが、曲の演奏が始まったとき幕張メッセのあのコンクリートの床が揺れた。アースクェイクレベルの盛り上がりに度肝を抜かれた。
いつの時代の曲だろうがみんなで盛り上がれる曲を、彼らは大事にしているんだろうか。

 

 

「Ray」という曲はとても好きになった。あとから調べたら私の好きなkzさんの初音ミクが歌っているバージョンもあった。自分の好きなものとほとんど初めて見るバンドがコラボしていると親近感を感じる。

 

3曲を歌い上げている間、モニターには4人の男の人が映っていた。「前髪が長くて目が見えないタイプのバンドかな?」とはなんとなく想像がついていたものの、実際に見ると本当に見えなかった。こっちが見えてないのにどうやって我々を見ているのか?
でもそのあとに「後ろまで見えてるぜ」って言ってた。バンプは千里眼。

余談だけどカメラワークが殺到するほど良かった。Mステの100倍はかっこいいカメラワークになっていたと思う。

 

ドラムの人は千里眼ではなかった。寡黙そうな感じの人で、私の記憶が正しければ新井浩文だったと思う。ベースの人は金髪で、物販担当らしい。

ギターの人はたまに右目が見えていたので、私は自己紹介がされるまでずっと心の中で彼のことをマシュと呼んでいた。

ボーカルの人は、首にワクチンを投与した跡みたいなタトゥーがあって、ずっと見てしまった。もしかしたら四つ目の家紋だったかもしれない。彼の歌声ではない声を初めて聞いたんだけれど、変な話ちょっとゾクっとするくらい甘いトーンだった。下品な言い方すると下半身に来る感じ。子宮がぎゅっとなる感じだ。男の人もなるだろう。

金髪の人はおしゃべりも担当していた。
私がこのライブで一番嬉しかったのがこのMCでのお話だ。

 

金髪の人はBUMP OF CHICKENのライブに来るのが初めてな人はどのくらいいるかと聞いた。「ああこれは知ってるわやしろ優がやってるやつね」と思いながら初めての私たちは手を挙げた。意外なことに初めての人は結構いて、少しびっくりした。
BUMP OF CHICKENのライブが初めてだという人がたくさんいることを知ると、金髪の人は自己紹介してくれた。「BUMP OF CHICKENと申します はじめまして」と言った。そのはじめましてにちょっと感動してしまった。今まで知っているだけだったバンド、声を上げて好きだと言っていたわけじゃないけど、その歌に寄り添った日があって、楽しく歌った日があって、回りに回った偶然みたいな縁があって、その上で、BUMP OF CHICKENが言ってくれた「はじめまして」だった。うまく言えないけれど、印象に残った。
BUMP OF CHICKENは幼なじみのバンドで、千葉県佐倉市の人らしい。私は神奈川出身で今は東京に住んでいるけれど、佐倉にあるコスモス畑に行ったことがあって地名を知っていたので、またちょっと親近感。みんな末っ子と長男らしい。私長女。また親近感。

 

で、本当に嬉しかったのがここだ。
BUMP OF CHICKENのライブが初めての人、知らない曲とかあるかもしれない。イントロかかって周りの人が「キタ神曲!」とかめっちゃ盛り上がってるのに知らなくて「え?そうなの?神曲なの?」ってなるかもしれない。俺もライブとかよく行くけど、あとからめっちゃYouTube見る。でもよかったら周りの人に合わせて一緒にノって楽しんでください。そんで、後からYouTubeとかで聴いてください」ちょっとうろ覚えだけどこんなようなことを言った金髪の人は、「次の曲も知ってるかなぁ…」と呟いて弦に手を伸ばした。

 

私はすごく心が軽くなった。

 

正直、周りのファンの人たちみたいに楽しめるとは思っていなかった。だって熱烈なファンじゃないんだ。その時点で大きいハンデを背負っていると思ってた。
前日行っていた人にオススメの曲を聞いて、幕張メッセに着くまでに頑張って曲は聴いていたけど、当然覚えられないし。というか移動時間ほとんど寝てたし。
ほとんど知らない曲を歌うんだろうな思っていた。


このあとだってずっと、周りのみんなと同じタイミングで合いの手入れたり、手拍子したりできなかった。一緒に歌おうって言ってくれた曲も、歌えなかった。でも最初にこれを聞いていたから、終わったあとに胸を張って楽しかったと言える。
後ろの女の人にガンガン頭殴られたし、隣の男の人はワキガだった。ステージは直接見えないし、メンバーも見えたとしてかろうじて人の形をしているということしかわからない。真上のモニター見すぎて首痛めたし、水たまりで転んだ。でも胸を張って楽しかったと言える。

 

ボーカルの人は、MCとライブ最後の挨拶で「ライブに行って、こんなに感謝されるんだ」ってくらいありがとうと言ってた。台風が近付く中、帰れないかもとかたくさん不安がある中、それでも来てくれてありがとうと。それが本当に嬉しいって言ってた。やる方もそんなに嬉しいんだ。そんなに深い喜びに溢れているとは、知らなかった。歌ってる人がそんなに幸せなら、なんか来てよかったなと思った。

歌、上手だった。CD音源みたいだった。「花の名は」は新参者だけどじーんとしてしまった。
エフェクターをかちかちする音や、曲が終わって暗転して次の曲が始まるまでの間、前の方の人が呼ぶバンドメンバーの名前とか。そういうのがライブっぽかった。「ふじくん」しか聞き取れなかったけど、メンバーは返事してた。優しい。
メンバーが向き合って演奏しあったり、目配せしたり、歌う直前の息を吸う音、首をつたう汗とか、そういったものが生々しく、私も頑張って手を挙げていた。

 

もう一度BUMP OF CHICKENのライブに行くかはわからない。自分でライブのチケットを買うことはないかもしれない。でも、ずっと曲は聞き続けると思う。テレビに出ていたら嬉しくなると思うし、街に曲が流れたら口ずさむだろう。佐倉に行けば幼なじみ同士の末っ子と長男でできてるBUMP OF CHICKENを思い出す。 

 

 

全国ツアー、PATHFINDER。読めるようになったよ。
ベースと物販と金髪とツイッターとおしゃべり担当のチャマ、ギターボーカルの藤くん、ギターのヒロ、ドラムの秀ちゃん。みんな覚えた!YouTubeで曲も聴いた。出勤も退勤も遊びに行く時もいつも聴いてるよ。

初めてのライブ、楽しかった。
本当にありがとう。